3470.mon // 「ヴィジュアル系は逆だよねって思って俺はヴィジュアル系を始めた」

本記事は通常とは異なった形で行なわれていますので、本題に入る前に少しその内容を紹介させていただきます。以下のインタビューはアルルカン・マガジンではなく2021年8月下旬にオザキケイト氏によって行なわれました。

オザキケイト氏は日本の東京に拠点を置くライターです。彼はミュージシャンや彼らのショーについて多くの記事を書いており、またかなりの数のインタビューも行なっています。

彼の許可を得て、今日、私たちは彼のオリジナル・インタビューである日本語版とその英語版をアルルカン・マガジンで共有しています。おそらく皆様がご存じの通り、このインタビューで特集するアーティストは 3470.monで、ボーカルの 平一洋、キーボードの SYUTO、ベースの RENAで構成されています。勿論、スタイルは従来と少し異なりますが、翻訳の際には極力原文に忠実であるように注意を払っています。

以下のインタビューをお楽しみいただければ幸いです。そして、今回もイントロダクションのご一読に時間を割いていただき有難う御座います。- アルルカン

 
 
平一洋率いる3470.mon(さよならマンデー)、0th EP『VHS』iTunes Storeデイリーロックランキング1位獲得につき緊急インタビュー。「ヴィジュアル系は逆だよねって思って俺はヴィジュアル系を始めた」

ヴィジュアル系シーンにおいて唯一無二の存在感を放つボーカリスト・平一洋(Vo)が盟友であるSYUTO(Pf/LAID BACK OCEAN)とRENA(Ba/CRAZY PUN KID)とともに3470.mon(さよならマンデー)なるプロジェクトを始動させた。謎に包まれた部分が多かった彼らが、先日デジタルリリース及びサブスク解禁した0th EP『VHS』は瞬く間にSNSを中心に広がり、iTunes Storeデイリーロックランキングで1位を獲得。その注目度の高さを物語っている。平一洋からは想像もつかないR&Bやソウルミュージックをバックボーンに感じるその音楽性、そして平の脇を固める底知れぬ個性を持つSYUTOとRENAからなる化学変化はヴィジュアル系シーンの中でもひと際異彩を放っている。右に倣えではなく自らの矜持を貫き続ける平が目指す理想の音楽とは。まだまだ謎が多い3470.monの三人がスタジオ練習をしている合間に話を聞いた。

――まず、3470.monはどのように始まったものなのでしょう?
平:もともとシュートマン(SYUTO)と何か一緒にやろうという話はかなり前からしていたんですけど、それこそここに至るまでギターもベースも変わったりしていて、二人で始めたものがどんどん大きくなっていった感じです。

――そうなんですね。当初は“凄い人達(仮)”という名前で漫才と音楽を絡めて活動されていましたが、そのプランに関してはどのように出来上がったものだったんですか?
平:漫才はコロナ禍になる前に知り合った芸人さんに酔った勢いで漫才やりたい!って言ったのがきっかけで、それがどこかのタイミングで漫才しながら急に曲に入ったりしたらショー的なものできるんはないかと思って全く違うジャンルの音楽と漫才をひとつのものにしてみようと思ったのがきかっけでした。

――ということは全く別で考えていたプランだったんですね。
平:そうです。バラエティに富んだショーみたいなライヴをやってみたいというふんわりとした構想はあって。でも、漫才は難しくて向いてないなって思いました(笑)

――やってみたいものはやってみるという行動力が実にらしいなと思います。話を音楽に戻しますが、3470.monで真っ先に着目するのはR&Bやソウルミュージックが基盤にあるその音楽性だと思います。この音楽性は構想段階から決めていたんでしょうか?
平:いや、俺はシュートマンが作る音楽はなんでも好きだし、「どうですか?」って聞かれたものが全部OKだったので自然にこうなったって感じですね。
SYUTO:R&Bやソウルミュージックに関しては僕が単純好きというのもあると思います。

――SYUTOさん自身“その人にしか歌えないものを作る”という発言をしていましたね。
SYUTO:3470.monの曲は激しくないって思われがちですけど、僕的は中に激しさを入れているつもりなんです。その中でもてんてんさん(平一洋)に合う激しさはラウドよりもパンクだと思っていて、R&Bやソウルミュージックのテイストにそのパンクのリズムを取り入れつつ、てんてんさんの声質やライヴのスタイルみたいな彼のいいところと合致するポイントを探して両方の良さが出るように作ろうとしている感じはありますね。

――どうしてもてんてんさんとSYUTOさんの組み合わせはRe:MY BACTERIA HEAT ISLAND(2016年3月から半年間二人が在籍していたバンド)の話を避けて通れないと思うのですが、当時のラウド+ピアノとはかなり音像が変わったのでびっくりしたのを覚えています。
SYUTO:リーマイバク(Re:MY BACTERIA HEAT ISLAND)の頃は、曲があって、それに僕がピアノを乗せるという作り方をしていたんですけど、今回は僕が最初から作っているのでテイストが違うというのはあると思います。

――RENAさんは後任ベーシストとして加入したわけですから、当然このプロジェクトの音楽性を事前に知っていたと思うのですが、加入する際にRENAさん自身のプレースタイルとの兼ね合いなどはどのように考えていたのでしょう?
RENA:正直得意なのはパンクですけど、こういう休符をたくさん使った音楽は昔から好きで、最近で言うとローファイヒップホップのノリが入っていたりと、日常から聴いている音楽に近いし、実はパンク以外にもいろいろな音楽が好きなんです。それに、ベーシストとして映える曲が多くて、元々僕はTHE BLACK SWANというラウドなバンドをやっていたのもあって、ガラッとイメージも変わるし、ベースがビートを作っていく音楽は楽しいだろうなと思いました。それは自分の中にないものなので、さらに引き出しが広がっていく感じが新鮮で楽しんでやっています。

――そもそもRENAさんに声を掛けた経緯というのは?
平:なーちゃん(RENA)はラッコ(平が以前在籍していたバンド)をやっていた頃からベ
ーシストとしても人間としても好きな存在で、ずっとバンドを組みたいと思ってて。実際に、ラッコのベースが脱退した時に声を掛けたりもしてたんですけど、タイミングが合わずでずっと組めずにここまで来て、今回前任ベースが抜けてソッコー声掛けた感じです。
RENA:まず、なんで最初から俺に声を掛けないんだろう、と!(笑)
一同:(笑)
RENA:僕自身も平一洋というボーカルのファンで、こいつと音楽やってみたいなとは思っていたけど、タイミングが合わず、僕には声が掛からずに別のベーシストと新しいこと始めるって聞いて、楽曲も聴かせてもらって、すごくいいなと思っていました。でも、当時はいざ一緒にやってもウマが合うのかわからなかったし、ここまで温めたことでお互いの人間性がわかって、今ならうまくやっていけるんじゃないかっていうタイミングでベースがいなくて困ってるというので、じゃあまずは手伝うよって感じで「幻覚さん」から参加するようになりました。
SYUTO:最初の段階でRENA君の名前は挙がってたんですけど、そのときはボーカルをやっていて、もしかしたら今はベースをやりたい感じじゃないのかな?っていう会話をしたのは覚えてる。
平:そうだった!でも、自然な感じで集まったし、三人ともキャラクターがバラバラではあるんですけど、それが自然と噛み合ったからこそ今成り立っていると思います。

――てんてんさんの歴代のどのバンドにも言えることだと思うんですが、必ず右腕となる素晴らしいギタリストがいらっしゃったじゃないですか。今度は同じウワモノでもとんでもないピアニストを連れてきたなと思ったんですよね。
平:リーマイバクの頃から大好きだったんです。そのあと離れ離れになってしまって、彼は俺が神様だと思ってるボーカリストとバンドを組んだんですよ。

――それがLAID BACK OCEANですね。
平:そうです。俺の中の神様と組んでるので環境が違うのは当たり前なんですけど、ライヴを見てもあか抜けたなと思って(笑)リーマイバクのときは「アンコールでちょっとピアノ弾いてきて」って頼んでも「恥ずかしいです」とか言ってたのに、ピアノ弾きながら骨折するような男に仕上がっていたので、次に何かやるときはシュートマンとって決めてました。
元々この話自体もういないメンバーからもらった話ではあったんですけど、シュートマンいないと嫌だなって。

――めちゃくちゃ愛されてますね。
SYUTO:僕は逆にてんてんさんとはぶっちゃけバンドはやりたくなかったんですけど…。
平:何ィ?!

――爆弾発言が(笑)
平:本当に柔らかく刺すよね(笑)
SYUTO:リーマイバクが活動停止したときもそうだったんですけど、バンドが止まると疎遠になってしまったんですね。そこから時間が経ってまた仲良くなってきたのに、またバンドを組んで、仮に解散してまた疎遠になるのは嫌だなっていうのがすごいあって。

――結果的に相思相愛ですね。
平:もともとバンドにするとかではなく、二人組のユニットやろうとかそんな感じだったし、
なーちゃんもそうですけど、ゴリゴリにバンドやろうよ!って感じではなく、自然に出来上がったものがすごくいいから世に出さないのはもったいないよねっていう感覚です。

――それでは0th EP『VHS』のお話に移りたいと思います。当時はまだ凄い人達(仮)という名前でしたが、初めての楽曲でもあった「純潔さん」はR&Bの要素とキャッチーなサビが特徴ですね。
SYUTO:この曲はサビまでがR&Bっぽくて、サビでビートがパンクに変わるんですけど、もともとはパンク要素がない、違うサビが乗っていたんです。というのも、さっきも言ったようにてんてんさんが歌うことを考えて、合致するポイントを探った結果がこのパンクなサビだったと。
平:この曲が出来たときは一生離したくないなって思いました。いろんな人に刺さると思うし、転機になると思ったし、一生残る曲だと思ったのを覚えてます。

――RENAさんはこのときはまだ参加前ですよね。
RENA:僕は当時ひとりの友人として一洋から相談を受ける中で「純潔さん」と「スピード違反さん」を聴かせてもらったんですけど、「純潔さん」を再生したときに“めっちゃいい曲じゃん!”って思いました。平一洋らしさと、SYUTO君の楽曲の持ち味が全部噛み合ってるなと。さらに、一聴するだけだとシンプルな曲なんだろうなと思ってたんですけど、いざコピーしようと音を拾ってみるとめちゃくちゃ作り込まれてて、こいつは変態だなと(笑)また平一洋はとんでもないものを拾って来たなと思いました。
SYUTO:いまRENA君が言ってくれたようにこの曲はテキトーにやったら絶対に出来ない曲なんで、自分も含めて楽器隊が演奏できるのかなっていう不安はずっとありました。テクニカルでありながらエモさも出さないといけないなかで、RENA君が入ってくれて、サポートしてもらってるじょん君とHyu-ga君含めた全員が真摯に音楽に向き合ってくれたおかげで表現できる曲なのかなと思ってます。

――どうしてもこの曲の歌詞で気になってしまうのは「午前3時星降る夜」(平が以前在籍していたKuRtというバンドに同名の楽曲がある)の箇所だと思うのですが、これは意図的に組み込んだのでしょうか?
平:意図的に入れました。というのも、セッションとかで10年以上前の自分の歌詞を歌ったときに恥ずかしくて歌うの止めちゃったんです。でも、それって当時の気持ちを忘れて、
感情を切り離してしまっているということに気付いて。改めて絶対に忘れたくないって思ったこととか、大事にしたい言葉や瞬間は覚えているので、積極的に入れていこうと思っています。

――なるほど。
平:今のこの情勢で来たくても来れない人とか、昔ほど追ってないけど気にしてくれてる人がたくさんいるのは感じているので、そういう人たちに対しても“今の俺はこうだけど、あの頃の気持ちも忘れてないよ”っていうのを伝えたいなと思って。

――素敵ですね。それにこれは偶然かもしれないですけどこの「純潔さん」というタイトルに対して「午前3時星降る夜」でも「純粋でありたい」と歌っているんですよね。
平:あー!そうですね!特別意識していたわけではないですけど、失くしたくないきれいなところっていうものが無意識のうちに繋がっていたんだと思います。

――では、二曲目の「スピード違反さん」についてお聞きします。こちらは打って変わってメロウなテイストですね。
SYUTO:この曲はバラードのテンポだけどバラードじゃない曲にしようっていうテーマがあって。要は、バラードって聴かせる歌で激しくないっていうのが主流ですけど、そこなじゃくて、テンポは遅いんだけど激しい曲っていうイメージで作ったのがこの曲のサビ部分です。さらに、この楽曲の面白いところは音源化されたものは普段から聴きやすく持ち歩けるようにしたいという意図のもと、ローファイヒップホップなテイストになっているんですが、ライヴだとバンドサウンドの「スピード違反さん」を楽しめるように二つのアレンジが存在しているんです。
RENA:僕はこの曲のレコーディングには参加していないので、ライヴでのイメージにはなるんですけど、もっとエモくて激しい音像なんですよ。でも、改めて『VHS』を聴いたらこういうミックスなんだと思ったのも事実で、今のSYUTO君の話を聞いて腑に落ちました。なので、そういう二つの楽しみ方ができるいい曲じゃないかなと思うと同時に、早く自分のベースで録り直したいです(笑)まだちょっと他人の曲みたいな感じがしちゃって。
平:この『VHS』を通しての話になるんですけど、この作品は曲が出来た順番にそのまま並んでいて、順番に聴いていくとだんだんこだわりが強くなっていっていると思うんです。「純潔さん」は各メンバーの考えを尊重しようっていう意識もあって、バンドだからメンバー個々の混ざりによっても変わると思うんですけど、そういうものがいい意味で削がれて、全員が同じ方向を見るような感覚になった始まりの曲が「スピード違反さん」だと思いますね。

――「スピード違反さん」というタイトルが印象的ですよね。
平:もう会えない人のことを歌っているんですけど、人によって生きるスピードが違うし、スピードが違えば違うほど人は離れていくじゃないですか。もちろん時期によってスピードも変わるからまた出会えるかもしれないけど、完全に逝っちゃったら会うことも出来ないし。なので、止まってても追いつけないし、だったらこれからはスピード違反してでも追いつきたいなって。

――それを“スピード違反”と表現するてんてんさんの言語センスが流石だなと。
SYUTO:(深くうなずく)

――では、またこちらもガラッと表情が変わる「幻覚さん」についてお話を伺います。
平:この曲に関しては俺が結構“こういう音楽やりたい”ってプレゼンしたら、それを意識した曲をシュートマンが作ってくれました。

――具体的にどういうオーダーを出したか教えて頂けますか?
平:古めのアニソンだったりゲーム音楽だったり、好きの物をばんばん言っていって、それの共通点を探してくれたんだと思います。普通、こんなふわっとしたオーダーを具現化してくれる人いないと思ってたし、出てきたものが思い描いていた物よりもさらによかったので、凄ぇわくわくしました。
SYUTO:昔のアニソンって、アニメを忠実に再現した曲が多いじゃないですか。なので、この曲のサビは『幽☆遊☆白書』の「微笑みの爆弾」を意識しました。ワードは違いますけど、あの曲の「ア・リ・ガ・ト・ウ・ゴ・ザ・イ・ます!」の言葉の嵌め方やリズムを意識して「おはよう世界」の部分を作ったり、新しく『幽☆遊☆白書』が公開されたらこの曲がオープニングで流れてほしいと思って作りました。

――RENAさんはこの楽曲から参加ですよね。
RENA:そうですね。まず、前任ベーシストが抜けたことでこの楽曲のMVに出てほしいって頼まれたんですけど、参加するなら曲も弾きたいなと思ってSYUTO君にデータもらって勝手にベースのレコーディングをしたんです。後から聞いたらシンセベースで行くつもりで、生のベースは録る予定じゃなかったらしいんですけど(笑)
平:誰に頼まれたの?!って(笑)
RENA:勝手に弾いて迷惑じゃなかったかなと思いつつも、曲を聴いて生ベースのニュアンスを入れた方がかっこいいという自信はありました。俺のイメージにないベースのビート感を加えられたし、ベースの美味しいニュアンスが出せたと思ってます。

――この曲の歌詞に関してもお聞きしていいですか?
平:俺はネガティブな男なので、自分のこの先の人生が想像できずに先が見えないような気持ちになるんですけど、同じような人って世の中にたくさんいると思うんです。年を重ねると無邪気に純粋なままではいられなくなって、子供の時みたいに違うものは違うって言えなくなっていくけど、そういうもどかしさみたいなものを抱えてる人に対して俺も一緒だよっていう答え合わせというか。「純潔さん」同様にこういう捨てたくない感情を忘れずに、しがらみは全部煙に撒いて生きていこうよって歌詞です。

――そして四曲目が「夜更かしさん」。この曲はメロウでありながら、構成が面白いなと思ったのですが。
SYUTO:これはアンチテーゼなんです。

――アンチテーゼですか?
SYUTO:音楽を聴くときにシャッフル機能を使って、気に入らなかったらワンコーラスで止めちゃうって聞き方をする人が結構いるって聞いて。それって本当の意味で音楽を楽しめてないんじゃないかと思うんですよ。なので、そういう人がどうしたら最後まで聴いてくれるかを考えた結果、最後にだけサビがあればいいんじゃないかと。なのでこの曲には「このコードに乗ったメロディはいつの日か忘れさられて消費されてくのでしょう」という歌詞があったりもするんです。
平:これ初めて言いますけど、この曲の歌詞の前半部分はシュートマンが書いてるんですよ。そういう意味ではバンドってメンバー同士、ある程度距離をとりながらバンドやってると思うんですけど、この曲くらいからメンバー間の距離がなくなって、表現の垣根がなくなってきたと思ってます。なので、実験というか試してみたいことがたくさん詰まった曲でもありますね。
SYUTO:そういうところでいうと、この曲のCメロ(一般的にいうサビ)のハイハットのリズムが均等ではなくもたれてるんです。気持ち悪そうで、そこに乗ると気持ちいいみたいな絶妙なバランスになっているので、そこも個人的にはポイントです。
平:最初スタジオで言われた時「正気かな?」って思ったもん(笑)俺もバンドが長いので、こういう実験的なことって結局元に戻すことが多いんですけど、やればやるほど良くなって行くのは初めてで、ライヴでやっててもすごく気持ちいいんです。
RENA:僕はこの曲から正式に依頼をされてサポート扱いでベースを弾いているんですけど、このメロウで気だるい感じを表現するならアタックがない音がいいなと思ってフレットレスベースを使っているのがひとつポイントです。ローの膨らみとかスライドのニュアンスにこだわって、ギリギリもたってるんじゃないかくらいのところで「遅いな!遅いな!」とはやる気持ちを抑えながらかなりの後ノリで弾いてます(笑)

――そして、最後が最新曲「悪魔くん」ですね。
SYUTO:これは最初イントロしかなくて、それをてんてんさんに聴かせたら「これ次出そう!」って言われたんです(笑)俺はこの先を作るとか作らないとか、ちょっと止めておこ
うとか、そういう返事がくると思ってたんですけどね。

――この曲は「純潔さん」に匹敵するくらいキャッチーに仕上がってますよね。
平:そうなんです!俺の中で基準は「純潔さん」なんです。音楽って世の中的に価値がないと思われてますけど、そんなことないと思っていて。このイントロを聴いたときに「純潔さん」とは違うテイストだけど価値があるものだと感じたんです。価値観は人それぞれですけど、例えるなら河原で石を見つける感覚というか。俺にはこの曲のイントロが凄くキラキラして見えたので、これは作らなきゃダメだと思いました。

――さらにこの曲は他の曲に比べると構成も展開も多いというのも特徴かと思います。
SYUTO:イントロから作っていったので、そこから次の展開がこうだったら面白いなっていうのを順番に続けていった感じです。なので、一曲の中で同じ個所が極めて少なくて、一曲通して聴いても飽きないような仕上がりになったなと思います。

――てんてんさんはラップのパートもありますしね。
平:まさかラップが来るとは思わなかったです(笑)
SYUTO:僕の中の曲の評価基準は第一にてんてんさんに合ってるか合ってないかで、合ってるというのはてんてんさんがこれまでのバンドでやってきたことに僕の期待値を込めた物も含まれているので、今回に関してはラップだったというわけです。
平:レコーディングに7時間半かかりました(笑)正直録り終わったときは納得してなかったんですけど、完成したものを聴いたら自分には見えなかったものが見えてきたというか。個人的にはバンドも長くやってきて、いろいろな物事を見ながらバンドやれてるつもりだったんですけど、まだまだ見えてない部分がたくさんあることに気付けたレコーディングでもあったなと。

――自分の新たな可能性に出会えたわけですね。
平:これまでは「てんてんさんはこうだから」っていう助言に対して反発してバンドをやってきたんですけど、こうやって自分のキャパシティーを広げられて説かれていく感覚は初めてでした。
RENA:俺もSYUTO君から「今回、ベース激ムズです!」って言われました(笑)「Aメロ、Bメロは指で弾いて、サビはピック弾きで」みたいに細かい奏法の指定や、普段やらないスラップのオーダーなんかも含めてこれは挑戦状だなって思いながらその期待値を超えられるようにレコーディングしてるし、一洋同様に一緒に音楽を作りながら自分自身のキャパを広げてくれてるなという感覚はあります。

――この曲含め、てんてんさんは今作の楽曲の歌詞は今までで一番前向きと発言されてましたよね。
平:前向きです。俺がネガティブの塊みたいな男だからわかりづらいかもしれないですけど、陰キャから見た希望みたいな。「悪魔くん」の歌詞もそうなんですけど、この“負”の感じが終わってほしいと思っていると同時に、この先の世の中って急に変わると思っているんです。なので、この情報にあふれた世の中において、未来をうまく想像しながら自分のセンスを信じて生きていかないと、悪い流れに流されて死んじゃうと思っていて。

――だからこそこの先の世の中を前向きに生きていこう、と。
平:これから先は混沌としていくと思うし、表よりも裏が濃くなっていく。きれいなものより汚いものが目に付くようになると思うんです。だからこそ、その混ざったものを美しいと思える価値観を持ってほしいというか。今日何度か話にあがっている“純粋さ”の話も繋がるんですけど、これからはこの気持ちを忘れないで行こうっていう感情を新しい純粋さとして更新して生きていこう、と。

――ちなみデジタルリリース/サブスク解禁の反響はいかがですか?僕自身待ってました!という気持ちでしたし、それがしっかりと結果(iTunes DLランキングロック部門で1位)として現れたことで、みんな同じ気持ちだったんだなと思ったのですが。
平:お母さんとか妹とか…
RENA:家族ばっか(笑)
平:地元の友達とかもですけど、普段自分が音楽をやってて連絡を取ることのない人から連絡が来るのが凄いうれしくて。1位って凄ぇんだなって。
RENA:『VHS』がロックのアイコンになってましたからね。あれは純粋に凄いと思った。
SYUTO:俺たちのジャンル、ロックなんだ!とは思ったけどね(笑)
一同:(爆笑)
SYUTO:これまでプロモーション出来てない部分があったので、やっと知ってもらう機会が出来たなと思いますね。

――てんてんさん自身“ヴィジュアル系はまだ死んでない。息を吹き返すきっかけになりますように”という発言をされていたと思うのですが。
平:一泡吹かせてやるつもりです。自分より売れてたり、数字持ってる人でも諦めてる人が多い気がしてて、“もっと曲をシンプルにしたほうがいいよ”とか“もっとわかりやすい化粧にした方がいいよ”という声が上に行けば行くほどめちゃくちゃ多いんです。自分でもいつも逆なことしてるなとは思うんですけど、俺はヴィジュアル系は逆だよねって思ってヴィジュアル系を始めた人間なので。

――人と違うことをするというマインドこそヴィジュアル系の根底にあるはずですからね。
平:回転寿司でずっとトロサーモン来るような感じです。この音楽良くない?って薦めても同じような音楽だなって思われてる。シーンが死んでるとは思ってないですけど、諦めてるから死んだっていうイメージになっちゃってるんです。でも、死にかけてるからこそ新しいものが芽吹くと思ってるし、これから変わっていくって俺は信じてるので、息を吹き返すきっかけになれればなって。
SYUTO:3470.monを回転寿司で例えると?
平:回転寿司なのに寿司じゃない何かが来る感じ!高級な新しいなにか!(笑)
一同:(笑)
平:音楽って楽しいものじゃないですか。夢とか希望とか、人の人生のきっかけになるものだから、聞き覚えのある言葉やこすり倒したような見た目で来られても何もその人の人生のきっかけにはならないと思うんですよ。もちろん、売れてそうなもの掻い摘んで組み合わせてってことは出来るし数字は出るのはわかってます。でも、それだと目の前しか見てないし、俺はこのバンドで売れるつもりだけど、仮に売れなくても“あの人がやってる音楽はずっと聴ける”っていうのが大正解だと思うので、それを追求していきたいなと。

――まさにてんてんさんのこれまでのバンドはずっと長く聴き続けられるバンドばかりですもんね。だからこそ“世の中の逆方向に全力疾走できる”発言に繋がるわけですね。
平:迷いながら怖い部分もあるんですけど、メンバーがジャンル関係なくボーカリストとしてこっちでいいと思うよって背中押してくれたり、聴いてくれるお客さんが大正解じゃんって言ってくれるからこそ自信持って走れるんだと思います。

――先ほどの逆を行く話ではないですが、個人的に3470.monの音楽性は『VHS』によって我々に植え付けられたイメージをさらに超えていってくれるんじゃないかと期待しているんです。
平:いつ世の中が動くかわからない現状でも毎回逆方向に行くつもりだし、逆方向に行けるものを持ってるメンバーなので、まだ出してないですけどゴリゴリにヘヴィな曲とかもあったりするんですよ。
SYUTO:スローなものやキャッチーものばかり出してるとなめられるかなと思って、めちゃくちゃ激しい曲とかも作ってるんです(笑)

――今後もいい意味で予想を裏切ってくれそうで楽しみです。
RENA:僕自身も曲が書けるし、すでにあげてるデモもあります。SYUTO君とは違う方向性の曲が得意だと思うので3470.monに新しい風を吹かせられればと思います。
平:歌詞もそうなんですけど、焦点をどこかに定めるというより全方位に向けているし、届かないところにも届くような音楽をやれていると思っているので、センスのいい人はついて来るだろうし、まだ見つけてない人は早く見つけて早く広めてほしいですね。
RENA:最後に一番ファンの人も懸念しているであろう平一洋はバンドが続かない問題に関しても、そこは全然俺らがサポートして、数年後に「ほらまだやってるでしょ?」と言えるような活動になったらいいなと思っているので、今後ともいろんな面で支え合いながら活動できたらいいなと思ってます。
平:もちろんこれまでいろんな理由があるんですけど、今は余計な考えを持たずに音楽を楽しんでやれてるから、今までよりは確率は高いと思います。人間的にも成長してるし、自信にもなっているので心配しないでほしいです(笑)

 

3470.mon

平一洋
(Taira Kazuhiro)
🎂 07/20

SYUTO

🎂 03/03

RENA

🎂 10/27

じょん
(John) (support)
🎂 07/21

Hyu-ga
(support)
🎂 04/10

 

オザキケイト

雪はArlequinのオーナーであり原動力です。
彼女はもともと Arlequin Photography という名前で写真家として 2009 年にこのプロジェクトを開始しましたが、それ以来ジャーナリズムと翻訳に興味を持ち始めました。 こうした関心のため、プロジェクトにはインタビューやレビューが追加されましたが、2021 年には最終的に「写真家」の限界に達し、Arlequin Magazineもそのミックスに加わりました。

雪はオランダ語を母国語とし、グラフィック デザインの学位を取得しています。 つまり、彼女は Arlequin Creations の中心人物でもあるということになります。
何年も経った今でも、彼女はArlequinで見られるインタビューやライブ写真を担当する主な人物ですが、レビューや舞台裏での仕事やコミュニケーションの大部分も彼女を通じて行われています。

彼女はオランダ語と英語をネイティブレベルで話しますが、日本語とドイツ語も理解します。

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